嫁が鬱になりまして。2日目

11月15日

11月中旬にしては日差しが強く暖かい日でした。

朝起きると、嫁からいきなり

「ごめんね」

何があったのか、寝る前に何かしてしまったかと不安になっていると、

「昨日は夫くんの事を否定してばっかりだった」

なんだそんなことか。別にいいんだよ、僕の事はどれだけ悪くいってくれたっていいんだよ。

嫁がいつも通りに戻れるなら。

いや、戻らなくていい。少しでも先に進めるならそれだけで僕は幸せなんだ。

「否定するのは良くない事だよね。ネガティブでごめんね」

今までの嫁であればこんな事でいちいち謝ったりするような性格では無かったので、驚きを隠せませんでした。

話を聞いていたら、昨日の会話の内容がどうにも引っかかっていたようで・・・

そのお詫びに100円ショップまで行って買い物を済ませてきたというではありませんか。

家から100円ショップまでは歩くと20~30分はかかるほどの距離にあり、なかなか歩いていこうとは思いません。

しかも嫁は免許を持っていなかったので、子供を連れて歩いて行ったに違いありません。

「大変だったでしょ。ごめんね、ありがとう。」

「気分転換にもなったし全然平気だよ」

読めはいつもよりも優しく僕に接してくれました。

逆にそのやさしさが僕の心を縛り付けるんです。いつものように小言を言ってくれる日はいつになるんだろうかと。

お昼すぎ

嫁は、また気分転換にどこかへ行ってくると言い出しました。

流石に昨日の今日で1人で出かけさせるのも気が引けた僕はどこへ行くのかを聞いてみました。

「子供が遊べるアスレチック見たいなところがあって、そこに連れて行ってあげたいんだ。」

嫁の事しか考えられていなかった僕にすさまじい右アッパーを喰らわせる嫁。

流石に頭が固すぎるなと自分に言い聞かせ、

「そういう事なら一緒に行こうよ。僕もちょうど遊びたかったしさ。」

と言うと、また申し訳なさそうな困り顔を見せて

「でも、仕事の邪魔しちゃわない?」

そんなことはないよ。大声で叫びたかった。

でも、嫁の気持ちもわかる。嫁の病院等で既に仕事を数日間休んでいる状態だったので、そのことすら嫁は気に病んでいる様子でした。

ただ、僕の人生にとって、優先順位が1番高いのはやっぱり嫁だったので、

「そんなことないから、一緒に行こうか」

と、嫁はしぶしぶながらも承諾してくれました。

こうして一緒に出掛ける事になり、柄にもなく舞い上がってしまった僕はそのまま車へ乗り込みました。

車内にて

車を走らせて数分が経った頃でしょうか。

目的地までは後5分ほどで到着とボルテージも高まってきたころに事件は起きます。

子供が寝てしまったのです。

これだけ聞くと別に大したことはない感じもしますが、嫁にとっては違いました。

「天使も寝ちゃったし、わざわざ起こしてまで遊びに連れていく必要もないよね。もう帰ろっか」

とても寂しそうにそうつぶやきました。

そんな顔を見て「帰る」なんて選択を出来るわけもなく、

「だったらちょっと別の所へ行こうか」

と提案するも、近場ではいったことのある場所ばかりでしたので「今更行ったところで・・・」と一蹴されてしまいます。

困り果てながら運転をしている僕に、嫁がいきなり

「牧場とか行ってみたいんだ」

と、思わぬ提案をしてくれました。

この助け舟に乗らない手はない僕は、2つ返事でその提案を受け入れました。

あとはどこへ行くかを決めるだけです。

普通なら、僕が良いところを探して見つけるべきなんでしょうが、あいにく運転中と言う事もあり、嫁に一任することにしました。

嫁にスマホで調べて貰えるかと聞き、それを聞いた嫁が近くにある牧場を調べる。

そして2~3分でいい牧場を見つけたとナビを設定してくれました。

牧場にて

牧場に着くなり、何やら不穏な空気が漂っていました。

来る途中にGoogle Mapで牧場の写真を見ていた僕たちは牧場へ着いたら写真に写っているように、カフェのテラスでヒツジやヤギとふれあい、牛は野原で寝転んでいる、そんな牧場を想像していたのです。

しかし、現実はちがいました。

カフェにはお客さんは1人もおらず、さらには動物の姿なんて影も形もありませんでした。

嫁はここでも悲しそうな顔で、もう帰ろっか。とつぶやいてしまう始末。

上手くいかない日もありますが、今日じゃなくたっていいじゃないか。
せっかく重い腰を上げて外出をしてくれたのにこんな仕打ちはひどいじゃないか。

そう思い、カフェの店員さんにどうなっているのかを聞きに行くと、

「ちょっと行ったところで牛だけなら見れますよ。」

金髪の若いお姉さんが快く教えてくれました。

「牛を見るだけじゃ面白くないよ。触れないならもういいよ」

と、悲しそうな表情でこちらを見ていた嫁の気持ちを一旦隅に追いやり、無理やり言われた方向へと歩き始めました。

少し歩くと生垣が無くなり辺り一面の草原がひろがっていました。

奥の方に目をやると牛の群れが日向ぼっこをしている最中で中には昼寝までしている牛までいます。

僕はホッと胸をなでおろしました。

うまくいかない事続きだった今日もこれで報われるな。と。

残念ながら、牛に触ることは出来ませんでしたが、嫁は牧場のおいしいプリンを食べて機嫌も良くなり、笑顔で帰路に就くことが出来ました。

終始申し訳なさそうな嫁を見ていると、やはり今までの僕の態度がそうさせてしまったんだなと実感します。

これからは僕の態度を改めて、もう一度嫁から気兼ねなく自分の意見を言ってくれるように振る舞いたい。

そんな気持ちで過ごそうと決心しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました